檻の外へー極道なんて、大嫌いー

……けれど、私はグッと拳を握りしめ、必死に深呼吸をしてその衝動を腹の底に飲み込んだ。
ダメだ。ここで私が本職の顔を見せて暴れたら、飛龍の連中がドン引きしてしまう。私はあくまで、ここでは「か弱くて普通の女子高生」でいなければならないのだから。
「……晴樹ってば、本当にデリカシーがないんだから」
私は精一杯の「普通の女の子」らしい怒り方を装って、ツンとそっぽを向いた。
そのやり取りを見て、剛田や他の幹部たちが一斉に晴樹に飛びかかった。
「おい晴樹! 姫に向かってなんて口の利き方だ!」
「いちごミルク飲んでる姫様、マジで最高に可愛いじゃないッスか! お前は土下座して謝れ!」
「いててっ! わ、悪かったって! 叩くなよお前ら!」
晴樹がみんなにヘッドロックをかけられながら騒いでいる。
そのドタバタ劇を見つめながら、私はストローに口をつけ、冷たい甘さをゆっくりと喉の奥に流し込んだ。
「……ふふっ」
思わず、自然な笑みがこぼれた。
馬鹿馬鹿しくて、騒がしくて、でもどこまでも温かい。
いつ頭から冷酷な命令が下るか分からない息の詰まるような日々のなか、この陽だまりのような屋上の時間が、私にとってどれほど救いになっているか。晴樹にも、彼らにも、きっと一生バレてはいけない秘密だろう。