檻の外へー極道なんて、大嫌いー

その瞬間、騒がしかった屋上の空気がピタリと止まった。
「……えっ!? 玲美たん、メシそれだけ!?」
佐伯が、信じられないものを見るような目で私の膝の上を指差す。
「おいおい、嘘だろ……。そんな小鳥の餌みたいな量で足りるのか? もっとガッツリ肉とか食わねぇと、風邪ひいて倒れちまうぞ!」
剛田までが本気で心配そうな顔を寄せてくる。
「え、あ……うん。私、あんまり食べる方じゃないから、これくらいで十分なの」
私が少し戸惑いながら答えると、隣で焼きそばパンを頬張っていた晴樹が、ふと私の手元を覗き込んできた。
そして、パックのパッケージを見るなり、盛大に吹き出した。
「ぶっははははっ! お前、マジかよ! まだそんな甘ったるいいちごミルクなんか飲んでんのか! 幼稚園児じゃねぇんだからよ、ガキだなー!」
腹を抱えて大笑いする晴樹。
その声が屋上に響き渡った瞬間、ピキッ、と私のこめかみに青筋が立つ音がした。
(……このバカ。あとで絶対シメる)
本邸の地下道場なら、迷わずその無防備な鳩尾に右ストレートを叩き込み、悶絶しているところに膝蹴りを入れて完全沈黙させているところだ。
いちごミルクが好きで何が悪い。って言うか昨日もマンションで飲んでたのあんたは見てたでしょうが!
ブラックコーヒーや煙草の匂いにまみれたあの世界で、この甘さだけが私の疲れた脳を癒やしてくれる唯一のオアシスなのだ。それを知りもしないで大声で笑う無神経さに、殺意が湧き上がる。