檻の外へー極道なんて、大嫌いー

午前三時三十分。
ようやく自分のマンションの最上階、私の部屋の玄関をくぐった時には、身体が鉛のように重かった。ウィッグとマスクを乱暴に外し、下駄箱の上に放り投げる。
「あー……クソ疲れた。おい玲美、俺、今日お前の部屋で寝るわ」
背後で靴を脱ぎながら、晴樹が唐突にそんなことを言い出した。
一つ下の階に行けば自分の部屋があるというのに、何を言っているのか。普段なら「冗談じゃない」と一蹴して追い出すところだ。けれど、リビングの壁掛け時計の針を見て、その気力すら完全に削がれてしまった。
今から速攻でシャワーを浴びてベッドに潜り込んだとしても、朝起きるまでに確保できる睡眠時間はせいぜい二時間ちょっと。ここで晴樹を追い出すために言い争う数分すら、今の私には惜しかった。
「……別に、いいけど。ソファー使って」
「お、マジか! ……って、いや、当然だろ! 俺は用心棒なんだからな!」
適当に返すと、晴樹は少し驚いたような声を上げた後、誤魔化すように早口でまくしたてた。本当に疲れているのか、それともただ私を一人にするのが心配なだけなのか。どちらにせよ、彼が私に危害を加えるような人間ではないことだけは、幼い頃から痛いほど分かっている。
「私、先に入るから」
私はそれだけ言い残して、逃げるようにバスルームへと向かった。