マンションの一室で、俺たちは無言で準備を進めた。
テーブルの上には、組から支給された「商品」が入ったバッグと、今夜の偽装工作用の小道具が並んでいる。
「……また、これか」
玲美が金髪のウィッグを被り、鏡の前で自分の顔を確認している。普段の黒髪の清楚な面影は消え、夜の街に紛れ込むための『偽りの顔』へと変わっていく。俺も銀髪のウィッグを被り、二人して黒いマスクを装着した。これだけで、あいては俺らの身元を突き止めるのが困難になる。
夕食に食べた冷たくなったコンビニのおにぎりが、胃の中に重く沈んでるような感覚がした。
腹の傷が痛むのか、玲美は時折、無意識に腹部を押さえている。
「無理すんなよ。今日は俺が主導で回るから」
「……余計なことしないで。」
玲美は短くそう答えると、バッグを背負い、マンションの地下駐車場へと向かった。
待機させていた二台の大型バイクが、冷たいコンクリートの上で鈍く光っている。エンジンをかけると、低く重い排気音が閉鎖された空間に響き渡った。
繁華街へ向かう道すがら、街の明かりがヘルメットのシールドに反射する。
俺たちは、これからこの街の闇に毒を撒き散らしに行く。誰かの人生を狂わせ、誰かの家庭を壊すための商売だ。
「晴樹、次の角を曲がったら裏路地よ。近くに得意先のホストクラブがある。」
インカム越しに聞こえる玲美の声は、冷徹なほどに冷静だった。
彼女はもう、組の汚れ仕事に染まりきった『盤上の駒』の顔をしている。
その凛とした声を聞きながら、俺は速度を上げた。
繁華街のネオンが、まるで二人を嘲笑うかのように色鮮やかに明滅している。
テーブルの上には、組から支給された「商品」が入ったバッグと、今夜の偽装工作用の小道具が並んでいる。
「……また、これか」
玲美が金髪のウィッグを被り、鏡の前で自分の顔を確認している。普段の黒髪の清楚な面影は消え、夜の街に紛れ込むための『偽りの顔』へと変わっていく。俺も銀髪のウィッグを被り、二人して黒いマスクを装着した。これだけで、あいては俺らの身元を突き止めるのが困難になる。
夕食に食べた冷たくなったコンビニのおにぎりが、胃の中に重く沈んでるような感覚がした。
腹の傷が痛むのか、玲美は時折、無意識に腹部を押さえている。
「無理すんなよ。今日は俺が主導で回るから」
「……余計なことしないで。」
玲美は短くそう答えると、バッグを背負い、マンションの地下駐車場へと向かった。
待機させていた二台の大型バイクが、冷たいコンクリートの上で鈍く光っている。エンジンをかけると、低く重い排気音が閉鎖された空間に響き渡った。
繁華街へ向かう道すがら、街の明かりがヘルメットのシールドに反射する。
俺たちは、これからこの街の闇に毒を撒き散らしに行く。誰かの人生を狂わせ、誰かの家庭を壊すための商売だ。
「晴樹、次の角を曲がったら裏路地よ。近くに得意先のホストクラブがある。」
インカム越しに聞こえる玲美の声は、冷徹なほどに冷静だった。
彼女はもう、組の汚れ仕事に染まりきった『盤上の駒』の顔をしている。
その凛とした声を聞きながら、俺は速度を上げた。
繁華街のネオンが、まるで二人を嘲笑うかのように色鮮やかに明滅している。

