檻の外へー極道なんて、大嫌いー

夜7時。港湾地区の飛龍の倉庫から逃げるように車を拾い、俺たちは都心へ戻った。
飛龍の幹部たちとの自己紹介は終わったが、今夜はこれから組の仕事――頭から下された、面倒なクスリの売り捌きのノルマが待っている。
マンションのエントランス前で車を降りると、街のネオンが冷たく俺らを照らした。
重い空気が二人を包む中、玲美が足を止め、俺を振り返る。その瞳は、昼間の倉庫で連中とふざけ合っていた時のものとは違い、組の汚れ仕事に向かう時のような鋭さを宿していた。
「ねぇ、何考えてるの?」
彼女は淡々とした口調で、問いかけてきた。
「……何がだ?」
俺がとぼけると、玲美は少しだけ視線を逸らし、自嘲気味に口角を上げた。
「飛龍のこと。私が『姫』として守られる対象になるなんて……あんたの性格からして、そんなの納得してないでしょ? 何か別の狙いがあるんでしょう。……私、自分のことくらい自分で守れるけど?」
彼女はそう言い捨てると、自分の華奢な指先をじっと見つめた。
あの日、倉庫で俺が彼女を守る盾を築いたこと。それが彼女には「俺が彼女をか弱く見積もっている」ように見えたのかもしれない。
俺はマンションの壁に背中を預け、彼女を真っ直ぐに見返した。