檻の外へー極道なんて、大嫌いー

アドレナリンが脳を駆け巡る。
鉄パイプの一撃を身を捻って躱し、空いた懐に潜り込んで鳩尾を撃ち抜く。木刀を奪い取り、それを盾にして突進してくる連中を次々と突き飛ばす。
組の訓練で培った体術は、ただの喧嘩慣れした暴走族とは次元が違う。俺一人で、三十人ほどの白虎をあしらうのに、さほど時間はかからなかった。

ものの数分後、グラウンドには呻き声を上げる白虎の連中だけが転がっていた。
「うおぉぉっ! すげぇ!!」
「おい、あの新入生、一体何者だ!?」
飛龍のメンバーや、校舎から見守っていた女子生徒たちから大きな歓声と拍手が沸き起こる。
俺は木刀を放り投げ、乱れた髪をかき上げながら、校舎の二階――玲美がいる窓を見上げた。
……はずだった。
「…………」
玲美は窓際で、呆れを通り越して、もはや「死んだ魚のような目」でこちらを見下ろしていた。
彼女の口元が、微かに動く。
(……本職が、カタギの高校生相手に本気出しちゃダメでしょ……)
その心の声が聞こえた気がして、俺は思わず苦笑いを浮かべた。
確かに、若が知ったら「手加減もできねぇのかこのバカが」とシメられそうだが、まあ、玲美が変な連中に絡まれないための予防線にはなったはずだ。
……多分。
俺は胸を張って、校舎へと歩き出した。
玲美の呆れた視線なんて、今はどうでもいい。