三日後の夕方。
本邸の重苦しい空気が、ようやく俺たちの背中から離れていった。
「――っ、はぁ……やっと、だね」
助手席に座る玲美が、高級車の窓を少しだけ開けて外の空気を吸い込んでいる。
まだ身体は完全ではないはずなのに、彼女の表情はここ数日で一番明るかった。本邸にいる時の、あの感情を押し殺したような顔はどこやら、今の彼女は年相応の15歳の少女の顔をしている。
「そんなに嬉しいのかよ」
「うん。……だって、あの家にいると、ずっと誰かに監視されてる気がして……息が詰まりそうだったから」
玲美は少しだけ肩の力を抜き、俺の方を向いて小さく微笑んだ。
その笑顔を見て、胸の奥がギュッとなる。あの重厚な本邸は、彼女にとっての「鳥籠」以外の何物でもなかったんだ。
俺は運転席の仕切り越しに、ポケットに入ったマンションの鍵を指先でなぞった。
若の指示で大樹の兄貴が手配してくれた俺の部屋の鍵だ。これで、何かあったら数秒で彼女の元へ駆けつけられる。若の命令とはいえ、俺にとってもこれ以上ない幸運だった。
「これからは、少しは自由にできるさ」
「……うん。晴樹が近くにいてくれるだけで、私、すごく安心する」
そんなことを言われたら、こっちが照れてしまうだろうが。
俺はわざとらしく窓の外へ顔を向け、ぶっきらぼうに返す。
「あー……まあな。俺も若の命令で監視役だし、嫌でもそばにいてやるよ。……変な虫がつかないように見張るのが、俺の役目だからな」
「ふふっ、ありがとう。晴樹」
彼女は照れ隠しの俺の態度をすべてお見通しなのか、もう一度、今度はイタズラっぽく笑った。
本邸の重苦しい空気が、ようやく俺たちの背中から離れていった。
「――っ、はぁ……やっと、だね」
助手席に座る玲美が、高級車の窓を少しだけ開けて外の空気を吸い込んでいる。
まだ身体は完全ではないはずなのに、彼女の表情はここ数日で一番明るかった。本邸にいる時の、あの感情を押し殺したような顔はどこやら、今の彼女は年相応の15歳の少女の顔をしている。
「そんなに嬉しいのかよ」
「うん。……だって、あの家にいると、ずっと誰かに監視されてる気がして……息が詰まりそうだったから」
玲美は少しだけ肩の力を抜き、俺の方を向いて小さく微笑んだ。
その笑顔を見て、胸の奥がギュッとなる。あの重厚な本邸は、彼女にとっての「鳥籠」以外の何物でもなかったんだ。
俺は運転席の仕切り越しに、ポケットに入ったマンションの鍵を指先でなぞった。
若の指示で大樹の兄貴が手配してくれた俺の部屋の鍵だ。これで、何かあったら数秒で彼女の元へ駆けつけられる。若の命令とはいえ、俺にとってもこれ以上ない幸運だった。
「これからは、少しは自由にできるさ」
「……うん。晴樹が近くにいてくれるだけで、私、すごく安心する」
そんなことを言われたら、こっちが照れてしまうだろうが。
俺はわざとらしく窓の外へ顔を向け、ぶっきらぼうに返す。
「あー……まあな。俺も若の命令で監視役だし、嫌でもそばにいてやるよ。……変な虫がつかないように見張るのが、俺の役目だからな」
「ふふっ、ありがとう。晴樹」
彼女は照れ隠しの俺の態度をすべてお見通しなのか、もう一度、今度はイタズラっぽく笑った。

