檻の外へー極道なんて、大嫌いー

「俺は、お前が失敗したことを怒ったことは一度もない。……そんなことも分からねぇほど、バカになっちまったのか」
若のぶっきらぼうな、しかし切実な言葉に、玲美の震えがふっと止まった。
彼女は信じられないものを見るような目で、恐る恐る魁を見上げる。
「魁……?」
「大人しくしてろ。肋骨がくっつくまで、お前の仕事は俺と大樹でやってやる。テメェの身体はテメェ一人のもんじゃねぇんだよ。……俺の許可なく壊すんじゃねぇ」
若はそう言い捨てると、傍らにあったコップを手に取り、慣れた手つきで玲美の口元へ水を運んだ。
その表情にいつもの冷酷さはなく、そこにはただ、行き場を失った愛情と、深い後悔の念が渦巻いているように見えた。
俺は横で、兄の大樹と顔を見合わせた。兄貴もまた、若のあまりの豹変ぶりに息を呑み、静かに視線を逸らしている。
若は、自分の冷酷さが玲美をここまで追い詰めていたことに、誰よりも深く傷ついていたのかもしれない。
「……晴樹、お前は少し下がってろ」
若に命じられ、俺は大人しくベッドから離れた。
若はそのまま、眠りから覚めたばかりの玲美を自分の腕の中にすっぽりと収めると、彼女が落ち着くのを待つように、静かにその背中をさすり続けた。
その姿は、まるで『死神』が『小鳥』を守る盾に変わったような、そんな光景だった。