檻の外へー極道なんて、大嫌いー

(……また、血の匂いの中に行くんだ)
ガンセーフのロックを解除し、夏特訓で健闘祝いにもらった大型オートマチック拳銃を取り出す。
チャカッ、と乾いた音を立てて弾倉を装填し、予備のマガジンを二つ、内ポケットにねじ込む。さらに、両太もものホルスターに、切れ味の鋭いコンバットナイフを一本ずつ忍ばせた。
つい数十分前まで「放課後のカフェ」の話をしていた自分が嘘のようだ。銃の重みが、容赦なく私を闇の世界へと引きずり込んでいく。
「玲美、準備できたか!」
「うん。行こう」
同じく黒スーツに防弾ジャケットを着込み、腰にチャカを差した晴樹と頷き合う。

*****

マンションの地下駐車場。
私たちはそれぞれの単車に跨り、フルフェイスのヘルメットを被った。
キュルルルルッ……! ヴォォォンッ!!
晴樹のバイクが、腹の底に響くような爆音を立てて地下駐車場を飛び出していく。私もそれに続き、スロットルを限界まで捻った。
真昼の市街地。
残暑の厳しい日差しの中、二台の単車は一般車両の間を縫うようにして、猛スピードでアスファルトを蹴り飛ばしていく。



目的地は、2キロ先にある料亭『桜月』。
風を切る爆音の中で、私はヘルメットの下で唇を強く噛み締めた。急所を外すとか、誰かを逃がすとか、そんな甘い考えが通用する状況ではない。仲間が殺されているかもしれない死地に、私たちは自ら飛び込もうとしているのだ。


……もう誰かが傷つくところなんて見たくない。