檻の外へー極道なんて、大嫌いー


夏休みが明け、二学期最初の登校日。
蒸し暑い体育館での長い始業式を終え、教室に戻って帰りのホームルームを待っていた時のことだった。
「ねぇ玲美、この後の放課後、駅前の新しいカフェ行かない?」
「あ、それ私も行きたーい!」
クラスの女子たちに囲まれ、どうやって断ろうかと苦笑いしていた私の制服のポケットで、スマホがけたたましくバイブレーションを鳴らした。
画面に表示された名前は『大樹』。普段、学校にいる時間帯に大樹の兄貴から連絡が来ることは絶対にない。
「……ごめん、ちょっと親から急用」
私は女子たちに軽く手を合わせ、教室の隅へ移動して通話ボタンを押した。
「……もしもし」
『お嬢、緊急事態です。今すぐ動けますか』
電話越しに聞こえてきた大樹の兄貴の声は、かつてないほど切羽詰まっていた。電話越しに、怒号と、鈍い破砕音……そして、乾いた発砲音が微かに聞こえる。
一瞬にして、私の身体から「女子高生」としての緩んだ空気が抜け落ち、極道の血が冷たく脈打ち始めた。
「状況は?」
『組がオーナーを務める料亭で、傘下の幹部と組長を集めた会合中に、御影組の襲撃を受けました。……敵はかなりの人数を揃えて周到に準備しており、現状、こちらは完全に劣勢です。本邸から若と精鋭を応援に向かわせましたが、到着まで時間がかかる』
「……私と晴樹の高校からの方が、近いから」
『ええ。申し訳ありませんが、一刻を争います。至急マンションに戻って、防弾ジャケットを着てください。拳銃とナイフもフル装備で、すぐに料亭へむかって欲しい。』
「了解。すぐ行く」