檻の外へー極道なんて、大嫌いー

【課題:『将来の夢』について、八百字以内で述べること】
原稿用紙の一番上に印字されたそのテーマを見た瞬間。
私の手の中で、シャープペンシルの動きがピタリと止まった。
『将来の夢』

普通の高校生の女の子なら、何を書くのだろう。
看護師になりたい。保育士になりたい。学校の先生さんになりたい。あるいは、素敵な彼氏を見つけて、平凡でも幸せな家庭を築きたい……。
(……私の、夢?)
文字通り「白紙」の原稿用紙を見つめながら、私の心は急速に冷えていった。
私の将来。
それは、小鳥遊組の優秀な暴力装置として、誰かを傷つけ、誰かから恨まれ、いつか路地裏で冷たい銃弾を浴びて死ぬこと。
あるいは、組の利益のために、顔も知らないどこかの極道の幹部と政略結婚させられ、彼らと同じように血に塗れた子供を産み落とすこと。
そこに、個人の『夢』が入り込む余地なんて、一ミリも存在しない。
もし「この世界から逃げ出したい」と書けば、それは組への反逆を意味する。