檻の外へー極道なんて、大嫌いー


骨折した肋骨の痛みもほとんど引き、忌まわしい包帯がようやく全て取れた頃。
私と晴樹は、数週間ぶりに飛龍の溜まり場である廃倉庫へと足を運んだ。
幹部部屋のドアを開けた瞬間、汗と制汗剤と、ジャンクフードの匂いが混ざった、むせ返るような「青春の空気」が私たちを包み込んだ。
「玲美たん!! もう体調はいいの!?」
「姫、無理すんなよ! また熱出したって聞いてマジで心配したんだぞ!」
部屋に入るなり、零が犬のように飛びついてきて、特攻隊長の誠先輩がニカッと笑いかけてくる。
ソファの中心では、総長の剛田が「姫様復活祭だ!! 今日は俺の奢りでピザ頼むぞ!」と大騒ぎし、その横で副総長の鳴海が「お前、今月の単車のローン払えんのかよ」と呆れたようにツッコミを入れていた。
「もうすっかり元気だよ。みんな、心配かけてごめんね」
私が笑って答えると、部屋中がパッと明るくなった気がした。
テレビの画面では格闘ゲームが激しい音を立てており、テーブルの上には開けっ放しのスナック菓子とコーラが散乱している。地下室の冷たいコンクリートの床や、咽び泣くような血の匂いとは無縁の、どこまでも眩しくて騒がしい世界。
私たちはソファに座り、コントローラーを奪い合いながらゲームをして、くだらない話で腹を抱えて笑い合った。
それは、私が極道の娘であることを一瞬だけ忘れさせてくれる、心から楽しいと思える時間だった。