檻の外へー極道なんて、大嫌いー

夏特訓の時もそうだった。
みんながあれほど刺青を勧めてきたのは、彼らが、本気で彼女を「自分たちの誇り」だと思っているからだ。
「だから……お前は、一人ぼっちじゃない」
俺は、彼女の目からこぼれ落ちそうになっている涙を、指の腹でそっと拭った。
「出来る限り、お前の汚れ仕事は俺も手伝う。俺が被れるものは全部被ってやる。……でも、今すぐ組を抜けるっていうのは、現実的に考えて無理だ。逃げても絶対に親父殿に見つかって、それこそ取り返しのつかないことになる。だから、今は大人しく組の命令に従っておいた方が良いと思う」
それは、ただの綺麗事じゃない。俺が彼女を守るための、一番現実的で残酷な結論だった。
「でも、これだけは絶対に忘れんな」
俺は玲美の両肩をしっかりと掴み、力強く告げた。
「この暗ぇ世界にも、玲美の味方はちゃんといる。俺が絶対に、お前の心だけは守り抜いてやる。だから……泣きたい時は、ここで思いっきり泣いていいから」
俺のその言葉が引き金になったように、玲美の大きな瞳から、ポロポロと大粒の涙が溢れ出した。
「……う、あ……っ、はるき……っ」
子供のように声を上げて泣きじゃくる玲美を、俺は痛む背中の刺青を気にすることなく、ただ力強く抱きしめた。
彼女の流すこの涙が、いつか本当に光の当たる場所で乾く日が来るまで、俺はどんな闇に沈んででも、この小さな背中を守り抜くと、心の底から誓った。