檻の外へー極道なんて、大嫌いー

俺は息を呑んだ。
俺たち組の男から見れば、若の圧倒的な暴力は「頼もしい絶対的な力」だ。だが、普通の世界に憧れ、誰よりも優しい心を持つ玲美にとって、若のその無自覚な狂気は、自分をがんじがらめに縛り付ける『呪い』そのものだったのだ。
あの時若がそんな凄惨なことをしたのは、玲美を人質に取られた怒りからだろう。
でも、若の優しさは、玲美にとっては刃を突きつけられているのと同じだった。
俺は何も言えなくなり、ただポンッと彼女の頭に手を乗せた。
「……そっか。ごめんな、お前の恐怖を軽く見てた。お前の言う通り、若のやり方はイカれてるよ」
俺がそう同意すると、玲美は少しだけホッとしたように息を吐いた。
俺は彼女の頭をゆっくりと撫でながら、ずっと伝えたかったことを口にした。
「でもな、玲美。この狂った世界が、全部お前の敵ってわけじゃないんだぜ。お前は監視されてるって言うけど、実はそうじゃない」
「え……?」
「俺や若、大樹の兄貴だけじゃない。……組の連中、とくに若い奴らはみんな、本気でお前のことを慕ってるんだよ。組長の娘だからとか、若の妹だからとか、そういう肩書きのせいじゃねぇ」
玲美は信じられないというように、大きな目を丸くして俺を見上げた。
「お前は馬鹿みたいに美人だし、それに……こんな血なまぐさい世界にいても、誰に対しても絶対に優しさを忘れないだろ。下っ端の奴らの名前をちゃんと覚えてたり、怪我した奴にさりげなく声をかけたり。あいつら、お前のそういうところに救われてるんだ。みんな、お前のためなら本気で命を張る気でいる。それくらい、お前はこの組の連中から愛されてるんだよ」