檻の外へー極道なんて、大嫌いー

【side 晴樹】

「……もう、組の仕事は、嫌だ……」
その震える小さな声は、俺の頭を鈍器で殴りつけられたような、凄まじい衝撃だった。
俺は言葉を失い、ただ目の前で俯く麗美を見つめることしかできなかった。
極道の世界の息苦しさや、理不尽な暴力に対する愚痴なら、今まで何度もこぼし合ってきた。でも、ここまで明確な『拒絶』の言葉を彼女の口から聞いたのは、物心ついてから本当に初めてのことだったからだ。
俺は、小鳥遊組の組長補佐を務める東條家に生まれた。
物心ついた時から、親父や大樹の兄貴、そして何より絶対的な憧れである『若』の背中を見て育ってきた。極道の世界の掟や血の匂いは、俺にとって日常の一部であり、染み付いた空気みたいなものだ。
もちろん、小学生の頃から麗美と一緒に受けさせられた特殊訓練は、思い出すだけで吐き気がするほど過酷だった。
学校なんてほとんど行けず、来る日も来る日も地下の道場で大人相手に殴り合いをさせられた。休日という休日はなく、土日にはハッキングの練習。少しでも気を抜いたり、訓練をサボろうとしたりすれば、容赦のない体罰が飛んでくる。逃げ出したくなる夜なんて数え切れないほどあった。
だが、中学生になり、実際に組のシノギを任せられるようになってからは、少しずつ感情が変わっていった。