六日目の朝。ついにその時が来た。
いつものように書類の束を抱えて若の私室に入ると、ベッドの上で、お嬢がゆっくりと重い瞼を開けているところだった。
「お嬢! 気がつかれたのですね」
俺が安堵の声を上げると、部屋の隅のソファベッドに無理やり身を縮めていた若が弾かれたように跳ね起き、あっという間にベッドの脇へ歩み寄った。
「……馬鹿野郎。どんだけ寝てやがった」
若は悪態をつきながらも、その声には隠しきれない安堵が滲んでいる。
だが、お嬢は自分の置かれている状況を瞬時に理解したのか、ひどく不機嫌そうに眉をひそめた。
「もう少しここで休んで行け。俺が親父の目をごまかしてやる」
若が珍しく甘い言葉をかけたというのに、お嬢は痛む体を無理やり起こそうとし、包帯だらけの顔をしかめて首を横に振った。
「本邸の空気は嫌いなの。……帰る。私の単車、どこ?」
肋骨が折れ、全身打撲の重傷を負って五日間も意識を失っていたというのに、バイクで帰るなど正気の沙汰ではない。当然、若の顔にサッと怒気が走った。

