檻の外へー極道なんて、大嫌いー

「……女を、逃がした……?」
若が、怪訝そうに眉をひそめて呟いた。俺も同じ思考に辿り着いていた。
「……おかしいですね」
俺は腕を組み、ベッドで眠る小さな体を見つめた。
「つい数日前、お嬢は本職を一人で三十人も制圧したばかりです。いくら広大な街とはいえ、金も力もない、ただ逃げ出しただけの女一人を、あのお嬢が『見つけられずに取り逃がす』など、物理的に考えられません」
幼い頃から小鳥遊組のいろはを叩き込まれていたたお嬢の追跡能力や情報収集能力は、中堅の大人の組員を凌駕している。情報屋を使えば、素人の足取りを掴むことなど造作もないはずだ。それなのに、失敗した?
点と点が繋がり、一つの明確な仮説が俺の脳裏に浮かび上がった。
「若。……ひょっとしてお嬢は、見つけられなかったのではなく……その女に情けをかけて、わざと逃がしたんじゃありませんか?」
「…………ッ!!」
俺の言葉に、若は持っていたタバコを灰皿に強く押し付け、ギリッと奥歯を噛み鳴らした。