檻の外へー極道なんて、大嫌いー

部屋の中には、重苦しい沈黙と、濃密なタバコの煙が充満していた。
血の汚れを拭い、全身に丁寧にガーゼと包帯を巻き終えた若は、ベッドで昏々と眠るお嬢から少し離れた窓際に立ち、苛立たしげに何本もタバコを吸い続けていた。
灰皿にはすでに、無残に揉み消された吸い殻の山ができている。眉間に深いシワを刻み、ただ黙って紫煙を吐き出すその背中からは、行き場のない怒りと焦燥が痛いほど伝わってきた。
コンコンコン。
控えめなノックの音と共に、若頭直属の部下が静かに部屋へ入ってきた。
「……若、大樹の兄貴。お嬢が受けた罰の理由について、情報が上がりました」
「言え」
若がタバコを咥えたまま、一切の感情を排した声で促す。
「はい。どうやらお嬢は、組が管理する売春宿から逃げ出した女の捜索を命じられていたようです。ですが、期限内に見つけることができず、その女を逃がしてしまったと……。それが、組長の逆鱗に触れた原因とのことです」
報告を終えた部下が一礼して退出する。
だが、その言葉が部屋に落ちた瞬間、俺と魁の間に奇妙な違和感が広がった。