檻の外へー極道なんて、大嫌いー

(……魁は、今頃……)
ふと、あの冷酷な義兄の整った顔が頭をよぎった。
奇しくも今日から数日間、魁は他県での重要な会合に出向いており、本邸にはいない。彼がこの場にいれば、私の命令違反を知って激怒しただろうか。それとも、あの不器用なやり方で、制裁を少しでも軽くしようと立ち回っただろうか。
彼がいない間に事が進んだのは、ある意味で幸運だったのかもしれない。今のこの無様な姿を、彼や大樹の兄貴には見られたくなかったから。
(晴樹……、剛田くん、零……)
全身を襲う痛みと、じわじわと迫り来る飢えと渇き。
気が狂いそうになる漆黒の暗闇の中で、私は必死に『光』の記憶をたぐり寄せた。
この間まで笑い合っていた、飛龍の騒がしくて温かい倉庫。
「麗美たん!」と無邪気に笑う零。
私を真っ直ぐな瞳で見つめ、「守ってやる」と言ってくれた総長。
そして、私の置き手紙を見て、今頃必死で私を探してくれているであろう、幼馴染の背中。
(大丈夫……。数日耐えれば、また、あそこに戻れる)
私は、血と泥にまみれた自分の両腕をきつく抱きしめた。
あの女を逃がしたことに後悔はない。どれだけ身体を壊されようとも、私は私の心だけは絶対に売り渡さない。
暗闇の地下室で、私はひたすら痛みに耐えながら、永遠にも思える孤独な戦いに身を投じた。