檻の外へー極道なんて、大嫌いー

「……寒っ」
真夏とはいえ、深夜の風はキャミソールと短パンだけのむき出しの肌にはひどく冷たかった。
私は両腕をさすりながら、コインパーキングに停めた車へと重い足取りで歩き出した。
(……やっちゃった)
胸の奥には、彼女を救えたという確かな安堵感がある。だが、それと同時に、とてつもない重圧と恐怖がじわじわと這い上がってきていた。
明日の夜、頭に「見つけられませんでした」と失敗の報告をしなければならない。
小鳥遊組の掟において、命令違反や任務の失敗は重罪だ。言い訳など一切通用しない。
それに、頭は娘である私にだけ、毎度毎度酷い折檻をしてくる。他の組員はここまでのことはされないのに。
明日、私は半殺しの目に遭うだろう。鞭か、木刀か、あるいは鉄パイプか。最悪の場合、地下の拷問部屋に吊るされるかもしれない。
(魁が知ったら、どれだけ怒るだろう……)
あの冷酷な死神ーー義兄の顔が浮かび、小さく自嘲の笑みがこぼれた。
「……仕方ない、よね」
誰もいない夜道でポツリと呟く。
後悔はない。ただ、明日迫り来る残酷な痛みへの恐怖だけを抱えながら、私は自分のマンションへと続く暗い道を、一人静かに歩き続けた。