檻の外へー極道なんて、大嫌いー

私は、心臓の奥が冷たく軋むのを必死に無視して、暗がりで震える女を見下ろした。
「……あなたが、昨日店から逃げた女ね」
感情を殺した低い声で確認すると、女はビクッと肩を跳ねさせ、ひゅっと息を飲んだ。私が小鳥遊組からの追手だと悟ったのだ。
彼女の顔に、底知れない絶望と恐怖が広がる。しかし、街灯の僅かな光に照らされた私の顔をまじまじと見つめた瞬間、彼女の瞳に別の感情――戸惑いと悲痛な色が浮かんだ。
「なんで……」
女は、泥だらけの膝を抱えながら、ボロボロと大粒の涙をこぼし始めた。
「なんで、あなたみたいな普通の女の子が……あんなヤクザの下で働かされてんの……?」
その震える声に、私は息を詰まらせた。
女は、泣き咽びながらポツリポツリと話し始めた。組に多額の借金を作った最低な彼氏の連帯保証人にされ、無理やり売られたこと。逃げ場のない密室で、クスリと暴力で支配されながら、得体の知れない男たちの相手をさせられ続けた、一年以上にも及ぶ地獄の日々のこと。
「お願い……逃がして……っ」
女は私の足元にすがりつき、泥だらけの手で私のスウェットの裾を強く握りしめた。
「あの地獄に戻されるくらいなら……私、今ここで死んだ方がマシ……!! お願いだから……ッ!」
血を吐くような、痛切な懇願だった。
彼女の爪が私の足首に食い込み、震える体から伝わってくる圧倒的な恐怖が、私の全身を鋭い刃物のように切り刻んでいく。
(……この人を、連れ戻す?)
頭の中で、雅臣組長の冷酷な顔がフラッシュバックする。