檻の外へー極道なんて、大嫌いー

深夜の住宅街は、繁華街の喧騒が嘘のように静まり返っていた。
車を降りて、足音を殺しながらコンビニ周辺の路地や陰をシラミ潰しに歩き回る。こんな時間に、行く当てもない女が身を隠せる場所……。
ふと、コンビニから少し離れた場所にある、古びた児童公園が目に入った。
街灯の光も届かない、薄暗い空間。私は警戒しながら、公園の中へと足を踏み入れた。
ブランコ、砂場、そして、コンクリートでできたドーム型の古い遊具。
その遊具の暗がりの中に――小さな人影が、丸くなるように蹲っているのを見つけた。
「……っ」
私は息を呑み、ゆっくりとその人影に近づいた。
間違いない。探していた女だ。
だが、その姿を間近で見た瞬間、私の胸は刃物でえぐられたように激しく痛んだ。
女は、派手でけばけばしい下着の上に、誰かから盗んだのか、拾ったのかわからないダボダボの汚れたパーカーを一枚羽織っただけの格好だった。靴すら履いておらず、泥だらけの素足が震えている。
私が近づいたことに気づいたのか、ビクッと肩を跳ねさせてこちらを見上げた彼女の目は、焦点を結ばないほど虚ろで、深い絶望と恐怖に染まりきっていた。
(……見つけた)
小鳥遊組の組員として、与えられた任務を遂行したのだ。ホッと胸を撫で下ろし、彼女の腕を掴んで車に押し込むのが私の『仕事』だ。
けれど。
彼女のそのボロボロの姿と、怯えきった虚ろな瞳を見た瞬間、私はどうしても手を伸ばすことができなかった。組員としての達成感など微塵もなく、ただただ、同じ女としての痛切な悲しみと、こんな地獄へ彼女を引きずり戻さなければならない自分への強烈な自己嫌悪が、私の心を黒く塗り潰していった。