檻の外へー極道なんて、大嫌いー

けれど、頭の命令は絶対だ。私が拒否すれば、もっと残酷な男たちが放たれ、その女は捕まった後に見せしめとして原型を留めないほど壊されるだろう。私がやるしかないのだ。
今回のシノギは、私一人での行動だった。
いつも隣にいる晴樹は、別の債権回収の仕事が立て込んでいて同行できない。
「くそっ、なんで俺がお前と別行動なんだよ! 大樹の兄貴に文句言ってやる!」と喚く晴樹を「仕事でしょ、我慢して」と適当にあしらい、私は単身で隣町の繁華街へと向かった。
ターゲットの女が逃げ出した売春宿に近い、欲望の匂いが染みついた歓楽街だ。
まずは情報収集から始めなければならない。
逃げた女の特徴が書かれたデータと写真だけを頭に叩き込み、私は夜の街に足を踏み入れた。正体がバレないよう、黒いキャップを深く被り、顔の半分以上を覆う黒いマスクをしている。服装もダボッとしたパーカーにデニムという、色気も何もない地味な格好だ。



けれど――今日はどういうわけか、異常なほど邪魔が入った。
「ねえねえ、おねーさん1人? これからどこ行くの?」
「キャバクラ興味ない? 君、マスクしてても絶対可愛いってわかるんだけど!」
「めっちゃエロいカラダしてんじゃん! 良いホテル紹介するよ?」
歩き出して数十分の間に、すでに十人以上の男たちに声をかけられていた。
酔っ払いのサラリーマン、胡散臭いスカウトマン、タチの悪そうなチンピラ。マスクで顔を隠し、下を向いて歩いているというのに、彼らはハエのように次から次へとまとわりついてくる。
「……結構です。急いでるんで」
冷たくあしらって足早に立ち去ろうとするが、しつこい男は腕を掴もうとまでしてくる。