檻の外へー極道なんて、大嫌いー

マンションに戻った翌々日。
私を待っていたのは、この前のショートケーキの甘さなど一瞬で消し飛ぶような、冷酷な現実だった。
『組が管理する売春宿から逃げ出した女を、三日以内に見つけ出して宿に戻せ』
父であり、小鳥遊組の頂点に君臨する雅臣組長からの、直々の命令だった。
電話越しにその言葉を聞いた瞬間、私の心臓は鉛を飲み込んだように重く、冷たくなった。
今まで与えられたどんな汚れ仕事よりも、一番気が乗らないシノギだ。
暴力団が管理する非合法の売春宿。そこで女たちがどんな扱いを受けているかなど、想像に難くない。法外な借金を背負わされ、逃げられないようにクスリ漬けにされ、心身ともにボロボロになるまで客の相手をさせられる。使い捨ての道具以下の扱いだ。
同じ女として、その逃げ出した売春婦の気持ちは痛いほどよくわかった。
監視の目を盗み、どれほどの恐怖と絶望の中で、一縷の望みにかけてその地獄から逃げ出したのだろう。せっかく自由を掴みかけたのに、全く見知らぬ私の手によって、再びあの地獄へと引きずり戻さなければならないなんて。
(……嫌だ。本当に、嫌だ)