――数時間後。
深夜の廃倉庫。
そこは、小鳥遊のシマを荒らしていた半グレ組織『蛇蝎』の本部だった。
「ひっ……! ぎゃああああっ!!」
鉄の扉がひしゃげる音と共に、倉庫内に絶叫が響き渡る。
先ほどまで、妹への差し入れのスイーツに悩み、刺青を断られて拗ねていた男の姿は、そこには微塵もなかった。
「……テメェら、誰のシマで商売してるか分かっててやってるんだろうな?」
血溜まりの中、漆黒のスーツを一切汚すことなく歩みを進める若。
たった十数分。俺たち部下が手を下すまでもなく、若は単身で三十人以上の武装した半グレどもを素手で蹂躙し、物理的に再起不能にさせていた。
「ゆ、許して……ッ! みかじめ料なら払う、だから命だけは……!!」
リーダー格の男が、床に這いつくばりながら若の磨き上げられた革靴にすがりつく。
だが、若の瞳には一欠片の慈悲も、感情すらも存在していなかった。あるのはただ、絶対的な暴力と死を司る『死神』の虚無だけだ。
「遅ぇよ」
パーンッ!!
乾いた銃声が響き、男の足が撃ち抜かれる。
苦悶の悲鳴をBGMにしながら、若は冷たく俺を振り返った。
「大樹。残りのゴミどもを掃除して、金庫の金回収したら本邸に戻るぞ。……帰りに、24時間やってるケーキ屋に寄れ」
「……はい。若」
血と硝煙の匂いが充満する凄惨な地獄絵図の中で、「ケーキ屋」という単語を真顔で口にする若頭。
若くして小鳥遊組のNo.2に君臨し、裏社会でその名を馳せる男も、誰よりも大切にしているお嬢のこととなると、ごく普通のカタギの兄貴のようになってしまう。
深夜の廃倉庫。
そこは、小鳥遊のシマを荒らしていた半グレ組織『蛇蝎』の本部だった。
「ひっ……! ぎゃああああっ!!」
鉄の扉がひしゃげる音と共に、倉庫内に絶叫が響き渡る。
先ほどまで、妹への差し入れのスイーツに悩み、刺青を断られて拗ねていた男の姿は、そこには微塵もなかった。
「……テメェら、誰のシマで商売してるか分かっててやってるんだろうな?」
血溜まりの中、漆黒のスーツを一切汚すことなく歩みを進める若。
たった十数分。俺たち部下が手を下すまでもなく、若は単身で三十人以上の武装した半グレどもを素手で蹂躙し、物理的に再起不能にさせていた。
「ゆ、許して……ッ! みかじめ料なら払う、だから命だけは……!!」
リーダー格の男が、床に這いつくばりながら若の磨き上げられた革靴にすがりつく。
だが、若の瞳には一欠片の慈悲も、感情すらも存在していなかった。あるのはただ、絶対的な暴力と死を司る『死神』の虚無だけだ。
「遅ぇよ」
パーンッ!!
乾いた銃声が響き、男の足が撃ち抜かれる。
苦悶の悲鳴をBGMにしながら、若は冷たく俺を振り返った。
「大樹。残りのゴミどもを掃除して、金庫の金回収したら本邸に戻るぞ。……帰りに、24時間やってるケーキ屋に寄れ」
「……はい。若」
血と硝煙の匂いが充満する凄惨な地獄絵図の中で、「ケーキ屋」という単語を真顔で口にする若頭。
若くして小鳥遊組のNo.2に君臨し、裏社会でその名を馳せる男も、誰よりも大切にしているお嬢のこととなると、ごく普通のカタギの兄貴のようになってしまう。

