檻の外へー極道なんて、大嫌いー

黒崎組との会合は、小鳥遊組の圧倒的な威圧感もあり、滞りなく五分の盃を交わす形で無事に終了した。
帰りの車中。
先ほどの落胆から立ち直ったのか、若はタブレット端末を操作しながら、冷徹な声で俺に指示を出した。
「大樹、明日の玲美と晴樹のシノギのリストを出せ」
「はい。明日は港区の闇カジノの売上回収と、うちのシマでクスリを捌いてる半グレ組織『蛇蝎(だかつ)』のアジトの制圧が二件……」
「アジト一件は俺がやる。リストから消しとけ」
若は、息をするようにそう言い放った。
「若。明日の午後は、若ご自身のスケジュールも詰まっていますが」
「空き時間が二時間ある。そこで片付ける。……あのガキども、特訓明けだ。少しは休ませてやれ」
(休ませてやれ、ね……)
言葉では「ガキども」と一括りにしているが、九割九分、お嬢の負担を減らすためだけの過保護な裏回しだ。自分の休み時間を削ってでも、大切な妹が傷つくリスクと疲労を減らそうとする。これが小鳥遊魁という男の、不器用で歪んだ『シスコン』の極致だった。
「……承知いたしました。では、蛇蝎の本部制圧のみ、若のスケジュールに組み込みます」