檻の外へー極道なんて、大嫌いー

若は、目に見えて落胆し、そして誤魔化しようのない苛立ちを露わにして、盛大な舌打ちをした。
「……そうかよ」
窓の外へプイッと顔を向けたその背中からは、「機嫌が悪い」というオーラが黒い靄のように立ち昇っている。運転手も冷や汗をかきながらハンドルを握っていた。
(……そりゃあ、落胆もするだろうな)
俺は心中で密かに突っ込んだ。
なにせこの男、お嬢が夏特訓で本邸に滞在している間に彫り師が来ると知った一週間前から、組のシノギの合間を縫って、タブレットで真剣に『女性向けの美しい刺青のデザイン』を検索していたのだ。
「死神」として恐れられる若が、眉間にシワを寄せながら「蓮の花がいいか……いや、蝶も悪くねぇ……」と、内心るんるんで妹に似合いそうな絵柄を見繕っていたなどと、他組織の人間が知ったら卒倒するだろう。