檻の外へー極道なんて、大嫌いー

【side 大樹】
隣県へと続く深夜の高速道路。
俺たち小鳥遊組の精鋭二十人を乗せた黒塗りの車列は、一切の乱れなく等間隔で闇を切り裂いていた。本日の目的は、隣県を牛耳る黒崎組との『五分の盃』を交わすための重要な会合だ。
俺は先導する車の助手席に座り、後部座席で静かに腕を組む若頭――小鳥遊若の様子をルームミラー越しに窺っていた。
一切の感情を排したその横顔は、まさに裏社会で畏怖される『死神』そのものだ。
その時、俺のスーツの胸ポケットでスマホが低く振動した。
発信元は、本邸にいる俺の親父――組長補佐の洋介だった。
「……大樹です。どうしました」
声を潜めて電話に出ると、親父の苦笑いを含んだ声が鼓膜を揺らした。
『あぁ、今ちょうど彫り師が帰ったところでな。晴樹のバカ息子は、嬉々として若と同じ龍のモンモンを背中に入れて喜んでるよ。……だが、案の定というか、お嬢は頑なに刺青を断ってな。結局入れずじまいだ』
「……なるほど。了解しました」
俺は短く応じて通話を切ると、深く、非常に深くため息をついた。
嫌な予感しかしないが、この報告を後ろのバケモノにしないわけにはいかない。
「……若」
俺が後ろを振り向くと、若がゆっくりと閉じていた目を開けた。
「親父からの報告です。晴樹の奴は、若と同じ龍の刺青を背中に入れたそうです。……ですが、お嬢は頑なに拒否し、結局何も入れなかったと」
その瞬間。
車内の温度が、物理的な重さを持って数度下がったような気がした。
「…………チッ」