君を待つ。桜の下でいつまでも

「ねぇ、アンタ」

次の授業が移動教室なので、移動しようと用具を持って席を立った時、横から低い声で話しかけられた。

怪訝に思ってそちらを見ると、このクラスで一番明るいあの人とよく一緒にいる子だった。名前は……覚えていないが。

「……」

極力話したくは無いので、ひとまず無言で相手を見つめ返してみる。

相手はひとつ舌打ちをしてから、カツカツと近づいて来、乱暴に僕の腕を掴んで廊下へと引きずり出した。

もうすぐ授業が始まるし、遅れて目立つのは嫌なのでどうにか振りほどこうと腕に力を入れてみたが、彼女に鋭く睨まれたので諦める事にした。

少し歩いて人気の無いところに連れてこられ、また乱暴に壁に押し付けられた。

「昨日、綾菜のことムシしたよね?何してんの?」

ああ、これか。

僕は度々、こうして彼女の仲のいい“お友達”から酷く睨まれる。

それもこれも、出席番号が前後であり、彼女が人が本を読んでいようがお構いなしに話しかけてくるからだ。

普通、無視をされた相手とは二度と話したくないものだと僕は思うのだけど、あの明るい子はどうやらメンタルが鋼らしい。

何度無視しても、その分何度も話しかけてくる。

人が迷惑しているのにも関わらず関係を持とうとしてくるあの子の方が、女子達に嫌悪される対象だと思っていたのだけれど、そうでもないらしい。

女子という生き物はよく分からない。