冷たい目の素良が笑って
恥ずかしくなった。

この笑いが
バカにされてる笑いでもいいか~と
思えるくらい
素良の笑顔が可愛かった。


休み時間、千鶴が前の席のイスを
ひっくり返して
素良を頬杖つきながら見つめた。


「相変わらず、かわいくない」

素良は、無言だった。

「ね、素良、いつまでも怒ってないで~」
甘えた声だった。

   ムカつく!!
「うるさいぞ。かまうな、あっちいけ」
   そうだ、あっちいけ!!


「ち~行くぞ」
その時、朝いちゃついていた男の方が言った。


「あ~ん!!まって~芳樹」

  男いるんじゃないの?


芳樹にとびつく
千鶴の後姿を見る
素良は、悲しそうな表情に見えた。


   まさか…好きなの?

空気は呼んだつもりだった。


教室を出て行こうとする
いちゃついた二人から
目線をはずした素良が
悲しげにみえたのは
なぜだろう・・・




ついつい盗み見しながら私は
ぼーっとしていた。


「何?」

「い…いえ、別に…」

冷たい目に戻った素良


  私も、あんな目で見られたい

私は、すっかり素良に夢中になった。


学校生活は、代り映えしなかったけれど
片想いという
はじめて経験する
切ない想いは、私を楽しくさせた。
きれいになって
素良に振り向いてもらいたい…


影の努力が始まった。
でも、そんな気持ちも
私にとっては、楽しかった。


片想いでもいい
素良を見つめていられるなら

心が通じなくても
この胸キュンな痛みが
私は、大好きだった。