「素良くん?」

お墓を出ようとしたとき
上がってきた
夫婦が声をかけた。

「あれ、お久しぶりです。」


「おきっくなったな~
何年ぶりだろ?」


「中学の時、偶然に会ったっきりです。」


「このまえ、治樹もきてたな。」
隣の妻に話しかけた。

「治樹も年に2回は来てるよね。
帰りはうちによって
お参りしていってくれるから。」

「親父が来てるんですか?」

「お墓周りきれいにして
お花を一杯かざって
そして、またその花を持って
お墓周りにゴミを
置いていかないんだって言ってたわ。」



「しばらくお墓の前で
ゆっくりしていくから
なにか喋ってるんだろ。
自分が追いやったって
罪の意識なのかな・・・・」


「親父が来てるなんて
知らなかった。」


その夫婦と別れて
ポツリと素良がつぶやいた。


「おかあさん、寂しくないね。
愛する人が会いに来てくれて。」



「うん。
寂しくなかったんだ・・・・
よかった・・・・
マジ・・・・よかった・・・・」


素良は母の墓を見上げた。
そして、私の手を力強く握った。