素良の母親の墓は山の上だった。
やっとたどり着いた時には
汗が流れた。


「かあさん、来たよ。
久しぶりだね。」


素良は大きなお墓の前に立った。


「さびしかったろ?
親父はきてくれないんだろ?
かあさんは、かわいそうだな~。」


私は花挿しに水を入れに行った。


「はい。」

「サンキュー
かあさん、松本 歩来 さん。
俺の・・・・・
俺のずっと忘れられなかった人・・・」



  忘れられなかった人・・・・・


嬉しかった。


「松本です。はじめまして。」
そう挨拶した。


周りの草取りを一緒にした。
「今年は草が少ないな」
そういいながら、
お墓の周りをきれいにした。


「かあさんは俺がいるからね。
誰も来てくれなくても
俺が来るから、寂しがるなよ。
来年も・・・・
必ず来るからさ・・・・」



二人でもう一度手を合わせた。

素良の母は寂しい想いで
自らの命を絶った。
愛する素良をおいていく
無念さ・・・・
でも今は、素良はこんなに
立派に成長して
お墓の前に立っている。


母はどんな気持ちで
息子を見ているんだろう。