「あたりまえにそばにいた
素良がいなくなってね
なんだか気がぬけちゃったんだ。」

「突然だったから・・・」

「素良と別れた時
『素直になれなくて手をつなぎそこねた
人がいて、その人を忘れられない』
って言われた。
私は、その時芳樹が忘れられなくて・・・」


「素良も私も知ってる。
あなたと芳樹がまだ続いているの・・・」

千鶴はびっくりした様子だった。


「ごめんなさい。
芳樹は、そういう奴だよ。
平気なの。
ただ、松本さんに関しては
ちがった。
すごく悔しいけど
あんな芳樹は見たことがなかった。」


「でも、やっぱいろいろあるよ~」
私は思わず笑った。

「松本さんが
芳樹に本気じゃないからでしょ?」


「え?」

「松本さんは自分を通り越して
違う誰かを見てる
つらくて悲しくて
逃げ出したくなるって言ってた。
だからあなたにずーっとムカついていた。
私は芳樹を愛してる。
腐れ縁なのかな、赤い糸じゃないことは
確かなんだけれど・・・・」

千鶴が美しい微笑みでつぶやいた。

「芳樹は心に一杯傷を持ってて
そこに触れることをすごく
拒否するから
でもほっておけないの。
多分、芳樹と付き合うた別れられない
忘れられないって
そんなことなんじゃないかなって…
あなたならわかるでしょ?」