大野院長に会いに行った。


「素良のことかい?」


「……はい……
留学すると聞きました、本当ですか?」


「うん、アメリカにね。」


「出発は?」


「1月17日だよ。」


「そうですか……
それだけ聞きたかったんです。」


「芳樹は頑張ってるかい?
兄貴ともよく話すらしいし
素良とも一緒にテレビをみたり
ゲームをするらしいよ。」

「ほんとですか!!??」
私は驚いた。
あんなに憎しみあってたのに
すごくうれしかった。


「私には、素良のこといわないし
私も素良のこと聞かないから
でもうれしいですね。
3人は親子なんだから。」


「素良をそっと送り出してやってね。
それがどういう意味か
きみにはわかるよね。
両親の過去に触れて
自分たちを見つめ直して
素良が悩み抜いた結果だから・・・」


「芳樹も知ってるんですか?」


「複雑だとはおもうけれど
芳樹も素良がきみから
離れてくれた方が
落ち着けると思うよ。
愛する者と一緒にいたいという気持ちは
芳樹のほうが
素良より強いってことだな。
兄貴にそっくりだ。」

そう言って笑った。