それから何度も
雅恵は通ったようだった。

帰りの遅い母を待つ
心細さが
雅恵に抱かれて
芳樹はおだやかになり
春江に内緒
という雅恵のいうことを聞いて
芳樹は雅恵がやってくるのを
母の帰宅より
心待ちにしていたと
芳樹が教えてくれた。



しかしそれは少しちがった。



それからしばらくして陽介に
雅恵から手紙がきた。


「今日こそは殺してやろう」
そう心に誓い
芳樹に何度も会いに行った。
私を裏切った
報いをこの子供の命を絶つことで
あいつらにわからせたかった。
でも・・・・
どうしてもできない・・・・
この子の屈託のない笑顔に
治樹に似たこの子を
憎みたいのに
憎めない・・・・・
殺す変わりに抱きしめてしまう



雅恵の苦悩は深かった。


素良をお願い
可哀そうな素良を・・・・
陽介さんにしかたのめない・・・・
父親に愛されなかった分
私が愛してあげるはずだったのに
疲れてしまいました。
あの人はきっと
素良を愛さないでしょう・・・・
愛する女と引き離された
恨みの存在でしかないから



その手紙が届いたのは
雅恵の葬儀が終わった夜だった・・・・