苦悩の表情で治樹が現れた。

「ごめん。
雅恵が妊娠してたんだ。」

「え?
別れるんじゃなかったの?」
春江は
治樹が、雅恵を抱いていたことにショックを
受けた。


「最後に……
俺を全部受け止めるから
これが終わりだから……って
そしたら来年には
解放してあげるって言ったんだ。
雅恵、妊娠するように俺をだましていたんだ。」


雅恵の激しい憎しみが
伝わってきた。
そして、治樹に対する愛情も…



「私の子供はもうすぐ生まれるわ。
雅恵さんの子は?」


「3月末が予定日だった。」


「同じ歳……」

「ごめん…春江……
雅恵は妊娠をきっかけに
絶対別れないって言いだした。
両親にも報告していた。」


「そう…………
私は、仕事を持ってるから
一人でも子供を育てられるわ。」


「別れるなんて言うな。
子供もおまえも俺が面倒みるから。」


治樹はもう私のいない生活は
ありえなかった。
春江もそうだった。


子供は待ってくれない……


春江は佐川のまま
3600グラムの大きな男の子を
治樹の腕の中で
出産した。