治樹という人間が
結婚によって
一人の女に縛られる人間ではないと
思っていた。

でも春江を抱き終わり
治樹と別れる時
治樹は言った。

「俺もお前が好きだったの知ってたか?」

春江は目が丸くなった。

「うそよ、嫌われてたんでしょ?」

「俺って男がわかってないな……
おまえは相棒だったわりには
全然だな。」

「だって、すごい私を避けていたから。」

治樹は春江を抱きしめた。


「俺の人間性は自分でも
理解に苦しむんだ。
相棒に女を感じて、嫌悪感が募りだした。
じゃれながら触れる
柔らかい胸に
おまえに女を感じる自分が
許せなかった。
陽介のように爽やかに愛せない…
抱きたい、その胸に触れたい…
その葛藤だったから。」


「嫌われたって思ってた。」

「おまえをそういうことで
汚すのがいやだった。
女を知るたび
嫌いになった。
ある程度、欲望が満たされたら
心に他の女がすまないうちに
終わりにした。
ヨウには悪魔って言われたよ。」

そう言って笑った。