「おめでとう、雅恵ちゃん……」

「春ちゃん!?来てくれたの?」

治樹は目を疑った。
高校の時の純真さもなく
そこにはやつれた
春江が立っていた。

みすぼらしいスーツが
いっそ貧素な感じだった。

治樹が言葉をさがしてると


「はじめまして。
佐川 春江 です。
雅恵ちゃんとは、いとこになります。
よろしくおねがいします。」
と、堂々と挨拶をした。


治樹も慌てて
「龍崎 治樹 です。
よろしくおねがいします。」


初対面のふりをした。



トイレで陽介に会った。

「春江が来てる。
他人のふりをしてほしいようだ。」

治樹はそう短く告げた。



治樹の言葉で
慌てて春江を探して

陽介の目もとまった。


春江の変わりように
だまっていようと
思った。


   苦労してきたんだな


目が熱くなった。