春江は膝をかかえて
公園のベンチに座っていた。

治樹のバイクの音に
立ちあがった。


ヘルメットをとりながら
治樹が近づいてきた。


「バイクじゃなきゃ
これないぞ。」


「来てくれないかと思ってた。
嬉しい・・・」

春江は泣きだした。


「普通ここはヨウだろ?」

「うん。わかってる。
ハルが電話に出るからいけないのよ……
ヒック…ヒック…」


言葉は嗚咽に消された。


「あのね、引っ越すことになったの。
おかあさんの実家……」

「実家って?」

「横浜……
都会のほうが仕事あるだろうって
おかあさん病気がちだし
ここではもう二人では無理だって。」


「そっか。しかたないな。」


春江が治樹の胸に飛び込んできた。