4時間目は始まっていた。
芳樹は、
「先生、松本さんのメガネを壊してしまいました。」
大きな声で言った。

シクシク泣く私に先生が心配した。

「お前、どうすればメガネをこわすんだ?
乱暴なことでもしたのか?」

「帰り、責任をもって
俺が家まで送っていきます。
家の人に謝ってきます。」


「いい…一人で帰れます。」

「見えるのか?」

「…見えません…」

「家の人に迎えにきてもらえないか?」

「母は仕事です。」

「そうか、じゃ、お前責任もって送って行け。
先生からも後で電話するから。」

芳樹はおおきな声で
「ラジャー」
と言った。

席につくにもぼやけて見えなかった。

芳樹が席まで手をひいた。

  素良が見てる… 
  千鶴も見てる…

  素良は少しかやきもちやいてくれるかな



しばらく嗚咽がとまらなかった。


「先生、松本さん保健室に行った方が
いいんじゃないですか?」

素良の声がした。

先生も私がショックを受けていると
思って、
「松本、落ち着くまで行って来い」と言った。


「俺連れて行きます。」

「悪いな。見えないみたいだから
気をつけてやれよ。」


  素良、なにか企んでる?

腕を素良につかまれた。


「ほんとに見えてないの?
演技じゃないの?」

コソコソ聞こえた。

わたしのようなサエナイ女が
イケメンに手を引かれてるとしたら?

それはおもしろくないだろう~


  ちょっと優越感~

感じたりするサエナイ私…