看護師がやってきた。

「歩来さんですよね?」

「はい……」

「彼が呼んでるわ。」

  カレ・・・

なんとなくその呼び方に違和感を
覚えながら、芳樹のところに行った。



「ごめん、家の方大丈夫だった?」

「うん。友達のとこに
泊まるって言ったから
大丈夫だよ。」

芳樹は、私の手を握った。



「今は、さっきのこと忘れて。
自分勝手なのはわかってる。
だけど、今はほかのこと考えられない。
これから
何がおこるか分かんない……」


大野医師が病室から出てきた。


病室から男の泣き声が聞こえた。


地を這う
低い声・・・・


「悪魔の声だ・・・」


芳樹はつぶやく・・・・