「夏って、俺あんまり好きじゃない。」

体を拭かれながら
芳樹が言った。

「どして?」

「だってさ、ベタベタして体くっつけて歩けないじゃん。」

「あ、そうだね、肌と肌つけたら
なんか、じっとりするもんね。」


「今日が冬だったらな」

「ばかだね~芳樹は~」

私はおかしくて笑った。



芳樹が私をふいに抱きしめた。

マスクをしている目は何気に気配だけを
感じて、胸が高鳴った。


「もう、大丈夫か?」

「うん…」

「今日、ありがとな。
こんなきれいな部屋で、風呂に入って
ぷくちゃんに身体拭いてもらえるなんて
すげー幸せなんだけど。」

「維持してね。私も掃除はあまり好きじゃないから。」


「この部屋に2人でいるって
初めてなんだ。
ずっと一人だからさ~」

「嘘!!女の人は?」

「こんな汚いとこ呼ばないよ。
恥ずかしいじゃん。」


「じゃ、なんで私は呼んだの?
恥ずかしくなかったの?」

ちょっとムカついた。

「ぷーちゃんにはさ
なんか、ほんとの俺を見てほしかった。
隠さない、俺………」


「ほんとの芳樹?」

「ほんとの俺………」


マスクで目隠ししたまま
芳樹がキスをした。


「かっこつけてない。
本当の俺を
ぷーちゃんに知ってもらいたい。
こんな気持ち、初めてなんだ。」