「べんとう食べる?」

さっき買った、弁当が手つかずのまま
残っていた。

「うん、お腹減った。
芳樹は、食べてないの?」

「一緒に食べようと思ってたから。」

「ごめんね。」

電子レンジで温めて
冷蔵庫からジュースを持ってきた。


お弁当を静かに食べた。


時計を見ると
もう7時になっていた。


「ごめん、もう帰らなくちゃ……
寄り道してきて、時間がなくてごめんなさい。
今日は、本当にごめんなさい。」

「俺こそごめん。
なんか、嫉妬して急ぎすぎた。
あのまま、ぷーちゃんついてきたら
押し倒してた。
冷静になれたから、よかった。」


沈んだ声


「用件を聞くよ。
もう、こんな最初から約束やぶるヤツいやだろう?」


いつも自信たっぷりの芳樹が
今にも消えそうな声でつぶやいた。



芳樹が自分と重なる

重なるから余計に切なくなる。


私もさびしいから…
利用してる?

そうかも知れない…


でも 肩を落とす芳樹を見捨てられない。



「夏休みに入ったら
一度、ここ掃除しなくちゃ。
バイトは朝から入れない日を作ってね。
ここ掃除するのは、かなりの時間がかかります。」



芳樹がはっと自分を見つめた。


「それって、また会ってくれるっていうこと?」


心配そうに聞いた。


「うん。掃除しよ。
せっかく一人暮らしなんだし…
リビングでゆっくりしたいじゃん。」


芳樹が笑顔になった。