【短編集】あの日、キミに恋をした。

とそのあともやり取りは続いて結局わたしはずっと会話を聞いてしまっていた。

しかも、物陰に隠れることなく堂々と。

ほぼ背後霊のように。

だから、やっぱり、言われたよね。

彼が話を後ろを振り返って開口一番に。


「なんか寒気がするなあ、風邪でも引いたかなあと思ったらやっぱそうだった。背後霊の仕業か」

「あ、あの。盗み聞きするつもりはなくて…」

「そもそも盗み聞いてないじゃん。何言ってんの」

「確かに。なるほどです」

「なるほど、って何に納得してんの?直接しゃべったことなかったけど、君も相当変わってるね」

「そうですか?ありがとうございます」

「だから、そーゆーとこ。ま、いいや。俺帰って勉強しなきゃならないから行くわ。んじゃ、また」


と、嫌味をお見舞いして帰ろうとするのでわたしは思いついていた妙案を口にした。


「あの!わたし、入塾テストの過去問ほぼ覚えてるので教えますよ!」

「声でか。ってか、ちょっとこっちきて」


二の腕を掴まれ、半ば引きずられるようにして再び外に連れ戻される。


「あのさ、いい提案なんだけど、それをあそこで言っちゃまずいでしょ。絶対先生たちに聞かれたじゃん」

「あ、なるほど。対策されてしまうかもと恐れてるんですね。まあでも、大丈夫です。内部テストの傾向とか特徴的な文言とかまるまるこの脳みそに入ってるので!」

「てことは、あと1週間で俺をここに合格させられるってわけ?」

「もちろんです!」

「じゃあ、やってみなよ。楽しみにしてる」

「いやいや、やるのはあなたですよ!」

「オレの名前、忘れたわけ?」

「いえいえ、忘れてないですよ。あなたの名前は…」


弥代悠雅くん。

この人もまた失恋仲間だ。

なぜ急に入塾しようと思ったのかとか聞きたいことはあるにはあったけど、授業の時間が迫って来ていたから、わたしたちは連絡先を交換して分かれた。