学校は冬休みに入り、クリスマスも過ぎた。
明里と持ち寄った料理を広げて開いたクリスマスパーティーは、最高に楽しかった。
新太から連絡が来ていることは誰にも言わず、私だけの小さな秘密として胸の奥に抱えていた。
年が明ける直前、新太から「ピアスを渡したい」と連絡があった。
会っていいのかどうか、ギリギリまで悩んだ。けれど、どこかで少しだけ、新太に心が傾きかけている自分を否定できなかった。
私は、彼に会うことを決めた。
待ち合わせ場所は、新太の家だった。
彼は、私たちが一緒にいる姿を誰かに見られることをひどく嫌がったからだ。
電車に揺られながら、見慣れた景色を眺める。
窓の外を流れる冬の街並みは、どこか急ぎ足で過ぎていく。彼と付き合っていた頃、何度も通ったこの路線。何も変わっていないその風景が、妙に懐かしく感じられた。
新太のマンションに着き、冷たい金属のインターホンを押す。指先が微かに震えていた。
もしお母さんがいたらどんな顔をして挨拶をすればいいのだろう。そんな不安を抱いていたけれど、家には新太以外の誰もいなかった。
「お邪魔します」
ドアが閉まる静かな音が、やけに大きく部屋に響く。
新太の部屋で、久しぶりに直接顔を合わせた。静まり返った室内には、彼の部屋特有の、昔からよく知っている柔軟剤と微かな香水が混ざった香りが漂っている。
「こうやって話すの、久しぶりだね」
「そうだな。……今日は、来てくれてありがとう」
少しの気まずい沈黙の後、新太は机の引き出しから、あの日なくしたピアスを取り出して手渡してくれた。
私は鞄から大切に持っていた片方を出し、再会したピアスを耳元でそっと合わせる。
「……柚那、やっぱりそれ似合うな」
耳元にあった新太の手が、そのままゆっくりと私の首の後ろへと回された。
静かに引き寄せられ、唇が重なる。
驚きもしなかった。身体が固まることもなかった。
私は、あえてそれを拒まなかった。
今ここで突き放すことはできたし、そうする選択肢だって持っていた。それでも私は、自分から拒絶をするという動作を意図して選ばなかった。
深くなるキスに応えることもなく、かといって逃げることもなく、私はただその熱を受け入れていた。
首筋に触れる彼の指先は少しだけ冷たくて、対照的に重なった唇からは微かな熱が伝わってくる。
かつては、この匂いに包まれるだけで胸が苦しくなるほど安心したし、彼に触れられるだけで世界中の誰よりも幸せだと思えた。
そんな過去の記憶が、肌の触れ合いを通して、記憶の底からぼんやりと蘇ってくる。
やがて、ゆっくりと後ずさるようにしてベッドへと導かれた。
膝の裏がベッドの端に触れ、抗う力をすっかり手放した私の身体は、シーツの上へと静かに沈み込んだ。
きしむスプリングの微かな音。すぐ上から覆い被さってくる新太の重み。
彼の吐息が耳元にかかり、肌を滑る指先の熱が、服越しに伝わってくる。
静かな部屋の中に、二人の衣服が擦れる微かな音だけが虚しく響いていた。
「……柚那」
掠れた低い声で名前を呼ばれる。
あんなにも冷たく私を突き放した声と同じはずなのに、今の彼は、すがるような甘い響きを帯びていた。
私は何も答えない。
ただ、静かに目を閉じて、彼が私に触れるがままに身を委ねた。
厚い遮光カーテンに遮られた密室の中、どこまでも単調で、温度のない時間が流れていく。
そして、私たちはそのまま体を重ねた。
明里と持ち寄った料理を広げて開いたクリスマスパーティーは、最高に楽しかった。
新太から連絡が来ていることは誰にも言わず、私だけの小さな秘密として胸の奥に抱えていた。
年が明ける直前、新太から「ピアスを渡したい」と連絡があった。
会っていいのかどうか、ギリギリまで悩んだ。けれど、どこかで少しだけ、新太に心が傾きかけている自分を否定できなかった。
私は、彼に会うことを決めた。
待ち合わせ場所は、新太の家だった。
彼は、私たちが一緒にいる姿を誰かに見られることをひどく嫌がったからだ。
電車に揺られながら、見慣れた景色を眺める。
窓の外を流れる冬の街並みは、どこか急ぎ足で過ぎていく。彼と付き合っていた頃、何度も通ったこの路線。何も変わっていないその風景が、妙に懐かしく感じられた。
新太のマンションに着き、冷たい金属のインターホンを押す。指先が微かに震えていた。
もしお母さんがいたらどんな顔をして挨拶をすればいいのだろう。そんな不安を抱いていたけれど、家には新太以外の誰もいなかった。
「お邪魔します」
ドアが閉まる静かな音が、やけに大きく部屋に響く。
新太の部屋で、久しぶりに直接顔を合わせた。静まり返った室内には、彼の部屋特有の、昔からよく知っている柔軟剤と微かな香水が混ざった香りが漂っている。
「こうやって話すの、久しぶりだね」
「そうだな。……今日は、来てくれてありがとう」
少しの気まずい沈黙の後、新太は机の引き出しから、あの日なくしたピアスを取り出して手渡してくれた。
私は鞄から大切に持っていた片方を出し、再会したピアスを耳元でそっと合わせる。
「……柚那、やっぱりそれ似合うな」
耳元にあった新太の手が、そのままゆっくりと私の首の後ろへと回された。
静かに引き寄せられ、唇が重なる。
驚きもしなかった。身体が固まることもなかった。
私は、あえてそれを拒まなかった。
今ここで突き放すことはできたし、そうする選択肢だって持っていた。それでも私は、自分から拒絶をするという動作を意図して選ばなかった。
深くなるキスに応えることもなく、かといって逃げることもなく、私はただその熱を受け入れていた。
首筋に触れる彼の指先は少しだけ冷たくて、対照的に重なった唇からは微かな熱が伝わってくる。
かつては、この匂いに包まれるだけで胸が苦しくなるほど安心したし、彼に触れられるだけで世界中の誰よりも幸せだと思えた。
そんな過去の記憶が、肌の触れ合いを通して、記憶の底からぼんやりと蘇ってくる。
やがて、ゆっくりと後ずさるようにしてベッドへと導かれた。
膝の裏がベッドの端に触れ、抗う力をすっかり手放した私の身体は、シーツの上へと静かに沈み込んだ。
きしむスプリングの微かな音。すぐ上から覆い被さってくる新太の重み。
彼の吐息が耳元にかかり、肌を滑る指先の熱が、服越しに伝わってくる。
静かな部屋の中に、二人の衣服が擦れる微かな音だけが虚しく響いていた。
「……柚那」
掠れた低い声で名前を呼ばれる。
あんなにも冷たく私を突き放した声と同じはずなのに、今の彼は、すがるような甘い響きを帯びていた。
私は何も答えない。
ただ、静かに目を閉じて、彼が私に触れるがままに身を委ねた。
厚い遮光カーテンに遮られた密室の中、どこまでも単調で、温度のない時間が流れていく。
そして、私たちはそのまま体を重ねた。
