週明けの学校。
結局、あれから新太とのLINEは、途切れることなく続いていた。
私は早々に明里を呼び出し、昨晩からの出来事、そして今も彼と連絡を取り合っていることだけを打ち明けた。
「明里、LINEじゃうまく言えなかったんだけど……実は今、新太と連絡を取ってるの」
「えぇっ!? どういう展開? 新太って、後輩の彼女とまだ続いてるんじゃないの?」
驚いて声を上げる明里に、私はスマホの画面を伏せながら答えた。
「……少し前に別れたって聞いたよ。私的には、今は何も深く考えないで、ただ当たり障りなく返信しているだけなんだけど」
本当は、ピアスの写真を見て心が激しく揺さぶられていることなんて、とても言えなかった。呆れられるか、怒られるのではないかと身構えていたけれど、明里の反応は私の予想に反して冷静だった。
「まぁ、別に柚那が悲しいとか辛いとかないんだったら、いいんじゃない?」
あっけらかんとした顔で、彼女は平然と言い放つ。その言葉に少しだけ肩の荷が下りた気がしたけれど、心に渦巻く罪悪感が消えることはなかった。
それから新太とのLINEは、進学のことや、お互いの休日の過ごし方など、何気ないやり取りが続いた。
そんなある日の夜。新太から突然、一通のLINEが届いた。
『今、電話できる?』
画面に表示された文字に、心臓がトクンと跳ねる。
『できるよ』と返信すると、数秒も経たないうちに画面が切り替わり、着信音が部屋に響き渡った。
深呼吸をして、通話ボタンを押す。
耳元にスマホを当てると、少しのノイズの後に、聞き慣れた低い声が聞こえた。
「久しぶりだな。……柚那、あのさ…」
電話越しに聞く新太の声は、あんなに私を傷つけたはずなのに、酷く穏やかだった。
「もうすぐクリスマスだろ? もし予定が空けられるなら、俺と一緒に過ごしてほしいと思ってるんだ」
思いがけないストレートな誘いに、心臓がドクンと大きく跳ねた。
頭の中が真っ白になりながらも、私は震える声で即答した。
「……ごめん。クリスマスはもう予定が入ってるの。明里と一緒に過ごす約束をしてるから」
「そっか……。わかった。ありがとな」
あっさりと引いた彼の声に、ほんの少しだけ拍子抜けする。けれど、一瞬の重い沈黙を置いて、新太がさらに言葉を重ねた。
「それと……。都合のいいことを言ってるのはわかってる。俺にこんなことを言う資格がないのも理解してる。でも、どうしても聞いてほしくて」
彼の声が、少しだけ低く、真剣な響きを帯びる。
「……また、柚那と付き合いたいと思ってる。すぐに関係を戻せるなんて思ってない。答えを急ぐつもりもないよ。俺を信じてもらえるように、ちゃんと頑張りたいんだ。……身勝手なのは承知の上だけど、このことは誰にも相談しないで考えてほしい」
「もう付き合えない」
そう突き放すことが、どうしてもできなかった。以前の私なら怒りに任せて電話を切っていたかもしれない。けれど今の私は、彼に嫌われたくないという感情が勝り、言葉が喉の奥で詰まってしまう。
「……気持ちは、わかった」
精一杯の言葉を絞り出すと、新太は少しだけホッとしたような息を吐いた。
「よかった。……クリスマスは無理でも、年内にピアスはちゃんと直接渡させて。また連絡する」
逃げるように通話終了のボタンを押す。
ツー、ツーという無機質な電子音が、静まり返った部屋に虚しく響いていた。
どうして。
あんなに優しくて、私のすべてを丸ごと受け止めてくれた勇斗の告白は、自分から泣きながら突き放せたのに。
私を一番深く傷つけたはずのこの人の、薄っぺらくて身勝手な言葉を、どうして私は、きっぱりと拒絶できないんだろう。
暗くなったスマホの画面を見つめながら、私は底なし沼のような自分自身の弱さに、どうしようもなく絶望していた。
結局、あれから新太とのLINEは、途切れることなく続いていた。
私は早々に明里を呼び出し、昨晩からの出来事、そして今も彼と連絡を取り合っていることだけを打ち明けた。
「明里、LINEじゃうまく言えなかったんだけど……実は今、新太と連絡を取ってるの」
「えぇっ!? どういう展開? 新太って、後輩の彼女とまだ続いてるんじゃないの?」
驚いて声を上げる明里に、私はスマホの画面を伏せながら答えた。
「……少し前に別れたって聞いたよ。私的には、今は何も深く考えないで、ただ当たり障りなく返信しているだけなんだけど」
本当は、ピアスの写真を見て心が激しく揺さぶられていることなんて、とても言えなかった。呆れられるか、怒られるのではないかと身構えていたけれど、明里の反応は私の予想に反して冷静だった。
「まぁ、別に柚那が悲しいとか辛いとかないんだったら、いいんじゃない?」
あっけらかんとした顔で、彼女は平然と言い放つ。その言葉に少しだけ肩の荷が下りた気がしたけれど、心に渦巻く罪悪感が消えることはなかった。
それから新太とのLINEは、進学のことや、お互いの休日の過ごし方など、何気ないやり取りが続いた。
そんなある日の夜。新太から突然、一通のLINEが届いた。
『今、電話できる?』
画面に表示された文字に、心臓がトクンと跳ねる。
『できるよ』と返信すると、数秒も経たないうちに画面が切り替わり、着信音が部屋に響き渡った。
深呼吸をして、通話ボタンを押す。
耳元にスマホを当てると、少しのノイズの後に、聞き慣れた低い声が聞こえた。
「久しぶりだな。……柚那、あのさ…」
電話越しに聞く新太の声は、あんなに私を傷つけたはずなのに、酷く穏やかだった。
「もうすぐクリスマスだろ? もし予定が空けられるなら、俺と一緒に過ごしてほしいと思ってるんだ」
思いがけないストレートな誘いに、心臓がドクンと大きく跳ねた。
頭の中が真っ白になりながらも、私は震える声で即答した。
「……ごめん。クリスマスはもう予定が入ってるの。明里と一緒に過ごす約束をしてるから」
「そっか……。わかった。ありがとな」
あっさりと引いた彼の声に、ほんの少しだけ拍子抜けする。けれど、一瞬の重い沈黙を置いて、新太がさらに言葉を重ねた。
「それと……。都合のいいことを言ってるのはわかってる。俺にこんなことを言う資格がないのも理解してる。でも、どうしても聞いてほしくて」
彼の声が、少しだけ低く、真剣な響きを帯びる。
「……また、柚那と付き合いたいと思ってる。すぐに関係を戻せるなんて思ってない。答えを急ぐつもりもないよ。俺を信じてもらえるように、ちゃんと頑張りたいんだ。……身勝手なのは承知の上だけど、このことは誰にも相談しないで考えてほしい」
「もう付き合えない」
そう突き放すことが、どうしてもできなかった。以前の私なら怒りに任せて電話を切っていたかもしれない。けれど今の私は、彼に嫌われたくないという感情が勝り、言葉が喉の奥で詰まってしまう。
「……気持ちは、わかった」
精一杯の言葉を絞り出すと、新太は少しだけホッとしたような息を吐いた。
「よかった。……クリスマスは無理でも、年内にピアスはちゃんと直接渡させて。また連絡する」
逃げるように通話終了のボタンを押す。
ツー、ツーという無機質な電子音が、静まり返った部屋に虚しく響いていた。
どうして。
あんなに優しくて、私のすべてを丸ごと受け止めてくれた勇斗の告白は、自分から泣きながら突き放せたのに。
私を一番深く傷つけたはずのこの人の、薄っぺらくて身勝手な言葉を、どうして私は、きっぱりと拒絶できないんだろう。
暗くなったスマホの画面を見つめながら、私は底なし沼のような自分自身の弱さに、どうしようもなく絶望していた。
