一人ひとりにアイスの味を聞いていく。
メモを取りながら、ついに梨花の番が来た。
「……味は、どうする?」
できるだけ感情を乗せないように、淡々と尋ねる。
すると、梨花は悪びれる様子もなく、ごく自然な口調で答えた。
「あ、じゃあ『いちご』で」
たったそれだけの、短い会話。
なのに、胸の奥で猛烈な苛立ちが爆発しそうになった。
私が店員だから、味を聞くのは当然だ。
けれど、私から彼を略奪した張本人である彼女が、まるで何事もなかったかのように、当たり前の態度で私にオーダーを告げる。
その無神経さに、不快感が込み上げた。
それでも、私は絶対に顔には出さなかった。
綺麗に貼り付けた接客スマイルのまま、オーダーを厨房へ通す。
準備ができたアイスを彼女たちのテーブルへ運び、最後までミスなく仕事をこなした。
我ながら、完璧に「大人」の対応ができたと思う。
自分で自分を褒めてあげたいくらい、最後まで見事に「店員の仮面」を守り抜いた。
やがて食事が終わり、会計の時がきた。
レジに立った私の前で、グループの最後尾にいた梨花が、不意に口を開いた。
「うちら、別れたよ」
「……え?」
あまりに唐突な言葉に、私はレジを打つ手を止めた。
梨花は周囲の友達に聞こえないよう声を潜め、私だけを見つめてこう言った。
「……あんなやつ、別れて正解だよ」
……は?
今、なんて言った?
誰に対して、それを言っているの?
怒りよりも先に、呆れと混乱が押し寄せてきた。
彼女は一体、私にどういう反応を求めているんだろう。
『そうだね、あんなやつ最低だよね』とでも、私が同調すると本気で思っているのだろうか。
私は返事すらできなかった。
ただ、氷のように冷え切った視線を、無言のまま梨花に向けた。
もしここで私が何かを言い返せば、感情が爆発して、また店に迷惑をかけてしまう。
だから私は、一切の言葉を発さず、瞬き一つせずに彼女を射抜くように見つめ続けた。
私のその冷ややかな反応が期待と違ったのか。
梨花はビクッと肩を震わせると、気まずそうに目を逸らし、逃げるように足早に店を出て行った。
――バイトが終わり、帰り道。
夜風に吹かれながら、重い足取りで自転車を押して歩いていると、ぽろぽろと涙が溢れて止まらなくなった。
悲しいから泣いているんじゃない。
……ただ、悔しかった。
新太が悪いのは分かっている。
でも、私は梨花にすべてを奪われ、千春に裏切られ、心が完全に崩壊しそうになりながらも……明里や勇斗に支えられ、必死に歯を食いしばってここまで踏ん張ってきた。
それなのに、私をあんなにも深く傷つけた張本人である彼女の「あんなやつ別れて正解だよ」という無神経な一言で、私のあの地獄のような苦しみが、すべて軽く片付けられてしまったような気がしたのだ。
(あの時の私の傷ついた気持ちや、泣き叫びたかった苦しい時間は……一体何だったんだろう)
少しでも、彼女が私に対して負い目を感じていてくれると思っていた。
心のどこかで、ほんの少しだけでも罪悪感を持ってくれているんじゃないか。
そんな淡い期待をしていた自分が恥ずかしくて、情けなくて。
「っ……うぅ……っ」
誰もいない夜道で、自転車のハンドルを握りしめたまま、私は声を出して泣いた。
ただひたすらに、悔しさがこみ上げてきた。
メモを取りながら、ついに梨花の番が来た。
「……味は、どうする?」
できるだけ感情を乗せないように、淡々と尋ねる。
すると、梨花は悪びれる様子もなく、ごく自然な口調で答えた。
「あ、じゃあ『いちご』で」
たったそれだけの、短い会話。
なのに、胸の奥で猛烈な苛立ちが爆発しそうになった。
私が店員だから、味を聞くのは当然だ。
けれど、私から彼を略奪した張本人である彼女が、まるで何事もなかったかのように、当たり前の態度で私にオーダーを告げる。
その無神経さに、不快感が込み上げた。
それでも、私は絶対に顔には出さなかった。
綺麗に貼り付けた接客スマイルのまま、オーダーを厨房へ通す。
準備ができたアイスを彼女たちのテーブルへ運び、最後までミスなく仕事をこなした。
我ながら、完璧に「大人」の対応ができたと思う。
自分で自分を褒めてあげたいくらい、最後まで見事に「店員の仮面」を守り抜いた。
やがて食事が終わり、会計の時がきた。
レジに立った私の前で、グループの最後尾にいた梨花が、不意に口を開いた。
「うちら、別れたよ」
「……え?」
あまりに唐突な言葉に、私はレジを打つ手を止めた。
梨花は周囲の友達に聞こえないよう声を潜め、私だけを見つめてこう言った。
「……あんなやつ、別れて正解だよ」
……は?
今、なんて言った?
誰に対して、それを言っているの?
怒りよりも先に、呆れと混乱が押し寄せてきた。
彼女は一体、私にどういう反応を求めているんだろう。
『そうだね、あんなやつ最低だよね』とでも、私が同調すると本気で思っているのだろうか。
私は返事すらできなかった。
ただ、氷のように冷え切った視線を、無言のまま梨花に向けた。
もしここで私が何かを言い返せば、感情が爆発して、また店に迷惑をかけてしまう。
だから私は、一切の言葉を発さず、瞬き一つせずに彼女を射抜くように見つめ続けた。
私のその冷ややかな反応が期待と違ったのか。
梨花はビクッと肩を震わせると、気まずそうに目を逸らし、逃げるように足早に店を出て行った。
――バイトが終わり、帰り道。
夜風に吹かれながら、重い足取りで自転車を押して歩いていると、ぽろぽろと涙が溢れて止まらなくなった。
悲しいから泣いているんじゃない。
……ただ、悔しかった。
新太が悪いのは分かっている。
でも、私は梨花にすべてを奪われ、千春に裏切られ、心が完全に崩壊しそうになりながらも……明里や勇斗に支えられ、必死に歯を食いしばってここまで踏ん張ってきた。
それなのに、私をあんなにも深く傷つけた張本人である彼女の「あんなやつ別れて正解だよ」という無神経な一言で、私のあの地獄のような苦しみが、すべて軽く片付けられてしまったような気がしたのだ。
(あの時の私の傷ついた気持ちや、泣き叫びたかった苦しい時間は……一体何だったんだろう)
少しでも、彼女が私に対して負い目を感じていてくれると思っていた。
心のどこかで、ほんの少しだけでも罪悪感を持ってくれているんじゃないか。
そんな淡い期待をしていた自分が恥ずかしくて、情けなくて。
「っ……うぅ……っ」
誰もいない夜道で、自転車のハンドルを握りしめたまま、私は声を出して泣いた。
ただひたすらに、悔しさがこみ上げてきた。
