君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~

翌日。今日は休日で、私のバイトは夕方からのシフトだった。

夕方、店に向かい、開店準備をしていつものように作業をこなしていく。
体を動かしていても、頭の片隅にはずっと昨日の予約表の文字がこびりついていた。

例の8人組の予約は18時からの予定だ。

どうか、あの嫌な予感が外れてくれますように。
そんな祈るような気持ちで接客を続けていた。

18時を回る頃、私がレジでお会計を済ませ、お客さんを笑顔で見送っていたときのことだ。
カラン、とドアベルが鳴り、店に入ってくる見慣れた顔に気づいて心臓が大きく跳ねた。

2組の生徒たちだ。
しかも、梨花や茉莉と仲の良いグループのメンバーだった。

「柚那ちゃんー! 8人で予約してるよー!」

無邪気に手を振ってくる同級生に、私は「いらっしゃいませ」とどうにか声を絞り出す。
予約名簿を確認して対応していると、グループの最後に、茉莉、そして梨花が店に入ってきた。

やっぱり……。

彼女たちの顔ぶれを見て、すぐに状況を理解した。これは、梨花が所属するブロックのダンスパフォーマンスチームの中でも、3年生だけの打ち上げだったのだ。

入り口付近で梨花とバッチリ目が合う。
彼女は一瞬だけハッとしたように目を丸くし、すぐに気まずそうな表情を浮かべて視線を逸らした。

(なんで、よりによってまた私のバイト先に……)

ドクン、ドクンと嫌な音を立てる心臓を必死に落ち着かせながら、私は「ご案内します」と全員を揃えてテーブルへ誘導した。
今はバイト中だ。私は店員で、彼女たちはお客さん。私情を挟むわけにはいかない。

ドリンクや料理の注文を聞き終え、私は一度キッチンへ下がった。
ちょうどそこに店長がいたので、同じ高校の生徒が打ち上げで来ていることを報告した。

以前、新太と梨花の一件で店長に配慮してもらったこともあるし、これ以上の迷惑をかけるわけにはいかない。私は、あえてそのグループの中に梨花がいることは伏せておいた。

事情を話すと、店長は人の良さそうな笑顔でこう言った。

「打ち上げか。だったら、アイスくらい俺からサービスして出すよ」

本来なら、とてもありがたい申し出だ。
けれど、今の私にとってその言葉は、あまりにも重く苦しいものだった。

それでも、仕事である以上、私は店長のアイスの提案をみんなに伝えに戻らなければならない。

込み上げてくる真っ黒な感情を必死に押し殺し、私は深く息を吸い込んで、絶対に崩れない「店員の仮面」を被り直した。