君の隣。~一番愛した人の裏切り、泥沼のモラハラ彼氏。傷だらけの私を最後に救ったのは、10年間私を忘れられずにいた「親友の元彼」でした~

クリスマスが過ぎ、慌ただしくお正月を迎え、ついに3学期が始まった。

クリスマス以降、明里とはLINEのやり取りこそ毎日していたものの、お互いの予定が合わず、ゆっくりと顔を合わせるのは久しぶりだった。

放課後、部活を終えた私は、冷たい風が吹き抜ける校門の前で明里と合流した。

「柚那! お待たせ! 久しぶりだね!」

明里はいつも通り太陽のように明るい笑顔を見せ、冬休みの思い出話をして笑い合っていた。
けれど、校門を抜けて静かな下校路へと入った途端、彼女のまとう空気がすっと変わった。

明里は少しだけ真剣な面持ちになり、白い息を吐きながらゆっくりと口を開いた。

「……まさか、柚那のバイト先にあの二人が来るとはね。LINEで聞いた時びっくりしたよ。まぁでも、柚那の新太に対しての気持ちも完全になくなったわけだし、結果としてこれでよかったんじゃないかな。相変わらず梨花は柚那に敵意むき出しみたいだけど」

「うん……」

新太への気持ちはもう綺麗さっぱり消えた。それでも、あんな泥沼のような形で別れた元カレとその彼女という存在が、どこか頭の片隅にへばりついて離れない自分もいた。

私が曖昧に頷くと、明里はふと足を止め、視線を足元へと落とした。

「そういえばね……。柚那にはずっと、言おうか迷ってたんだけど」

普段の快活な明里からは想像もつかないような、今にも消えてしまいそうな弱々しい声だった。

「私たち、少し前に別れ話が出てたんだよね。ちょうど柚那たちが別れた、少し後に……勇斗から、別れたいって言われて」

「……えっ?」

予想外すぎる言葉に、私の時が止まった。
勇斗から別れ話を? 仲が良さそうに見えた二人が?
私の知る限り、勇斗が明里を無下に扱うような素振りなんて、これっぽっちもなかったのに。

驚いて言葉を失う私に、明里は「柚那がすごく辛い時期だったことだから、心配をかけたくなくて黙ってたの」と、申し訳なさそうに眉を下げて「ごめんね」と笑ってみせた。

(私が自分のことでいっぱいいっぱいになっている間に、明里にまでそんな気を使わせていたんだ……)

胸がズキリと痛んだ。

「謝らないでよ……。私、いつも明里や勇斗に支えてもらってばかりで。明里がそんなに大変な時期だったのに、隣にいて何も気づけなくて……ごめん……」

私の言葉に、明里はふるふると首を横に振った。

「そんなことないよ。言わないって決めたのは私だし……。それに、私のわがままで勇斗を困らせているのもわかってるの」

彼女は、どこか遠くを見るような、ひどく寂しげな目で小さく微笑んだ。

「勇斗ね、私に対しての『好き』っていう気持ちがわからなくなったんだって。このまま付き合い続けるのは違うと思ったみたいで、別れ話を切り出されたんだけど……私が泣いて、必死に縋って引き留めたから、なんとか付き合ったままになってるの」

明里の声が少しだけ震えていた。
ポケットの中で握りしめられた彼女の手が、微かに震えているのが伝わってくる。あんなに強くて明るい明里が、泣いて縋るほどに追い詰められていたなんて。

「でもね、正直……こんな風に無理に勇斗を繋ぎとめていてもダメだってことくらい、私だって本当はわかってるの」

明里は切なさの混じった表情を浮かべながらも、その瞳の奥には、どこか腹を括ったような、静かな光が宿っていた。