遥からの無神経な報告を突き放したことで、私の心を取り巻いていた黒い渦は少しだけ落ち着き、ようやく元の日常が戻りつつあった。
まだまだ心は複雑なままだし、完全に吹っ切れたわけじゃない。
それでも、前を向こうと必死に息をして、なんとか学校生活を送っていた。
なのに最近、学校の廊下や階段で、新太と梨花が二人並んで歩いている姿を見かける機会が以前よりも増えていた。
新太は私に気づいていない様子で、梨花と他愛のない話をしている。
けれど、梨花とは必ずと言っていいほど、ピンポイントで目が合ってしまうのだ。
目が合っても、すれ違いざまに何か言葉を交わすわけではない。
けれど、彼女は明らかに私の存在を意識し、「私の新太だから」とでも言いたげな、勝ち誇ったようなねっとりとした視線を送ってくる。
ある日。休み時間に次の授業のため教室を移動していると、また前方の廊下に二人の姿があった。
周囲には他の生徒たちもいて、笑い声や話し声で騒がしいはずなのに、私には二人の姿だけがやけに浮き彫りになって見えた。
引き返そうかとも思ったけれど、ここで逃げるみたいに背を向けるのは負けた気がして。私はなるべく視線を合わせないように、俯き加減で通り過ぎようとした。
その時だった。
梨花は私の姿を確認すると、わざとらしく背伸びをして、あからさまに新太の唇に軽くキスをした。
「……えっ」
チュッ、という小さな音が、騒がしい廊下でやけに鮮明に耳に届く。
一瞬、世界から色が消え、自分の足が床に縫い付けられたような感覚になった。
新太は突然のことに驚いた様子で、「おま、急に何……っ」と戸惑いながら梨花を見ていた。
照れているというよりは、本当に予想外の行動に焦っているような、少し引きつった反応だった。
けれど、当の梨花は新太の腕にすがりつきながら、肩越しに私へ向かって勝ち誇ったような笑みを向けている。
その目は、はっきりと私を射抜いていた。
ズキリと、胸の奥が鋭く痛んだ。
私がよく知っている新太に、私を裏切った女の子がキスをしている。その現実は、せっかくかさぶたになりかけていた傷口を、容赦なく乱暴に剥がしていく。
ギュッと制服のスカートを強く握りしめ、必死に平静を装った。
心臓がうるさく鳴るのを必死に抑え込み、感情を顔に出さないようにする。
けれど同時に、ひどく冷めた感情も、私の奥底から静かに湧き上がってきた。
(……きっとあれは、私に見せつけるためにわざとやってるんだ)
彼女の行動は、あまりにも不自然で、あからさますぎた。
新太の気持ちや周囲の目なんてそっちのけで、わざわざ私の目の前で、見せつけるようにキスをするなんて。どれだけ性格が歪んでいるのだろう。
私は見なかったふりをして、無表情のまま二人の横を通り抜けた。
けれど、そう確信するような嫌な出来事が、この日を境に、日を追うごとに何度も何度も繰り返されるようになっていった。
まだまだ心は複雑なままだし、完全に吹っ切れたわけじゃない。
それでも、前を向こうと必死に息をして、なんとか学校生活を送っていた。
なのに最近、学校の廊下や階段で、新太と梨花が二人並んで歩いている姿を見かける機会が以前よりも増えていた。
新太は私に気づいていない様子で、梨花と他愛のない話をしている。
けれど、梨花とは必ずと言っていいほど、ピンポイントで目が合ってしまうのだ。
目が合っても、すれ違いざまに何か言葉を交わすわけではない。
けれど、彼女は明らかに私の存在を意識し、「私の新太だから」とでも言いたげな、勝ち誇ったようなねっとりとした視線を送ってくる。
ある日。休み時間に次の授業のため教室を移動していると、また前方の廊下に二人の姿があった。
周囲には他の生徒たちもいて、笑い声や話し声で騒がしいはずなのに、私には二人の姿だけがやけに浮き彫りになって見えた。
引き返そうかとも思ったけれど、ここで逃げるみたいに背を向けるのは負けた気がして。私はなるべく視線を合わせないように、俯き加減で通り過ぎようとした。
その時だった。
梨花は私の姿を確認すると、わざとらしく背伸びをして、あからさまに新太の唇に軽くキスをした。
「……えっ」
チュッ、という小さな音が、騒がしい廊下でやけに鮮明に耳に届く。
一瞬、世界から色が消え、自分の足が床に縫い付けられたような感覚になった。
新太は突然のことに驚いた様子で、「おま、急に何……っ」と戸惑いながら梨花を見ていた。
照れているというよりは、本当に予想外の行動に焦っているような、少し引きつった反応だった。
けれど、当の梨花は新太の腕にすがりつきながら、肩越しに私へ向かって勝ち誇ったような笑みを向けている。
その目は、はっきりと私を射抜いていた。
ズキリと、胸の奥が鋭く痛んだ。
私がよく知っている新太に、私を裏切った女の子がキスをしている。その現実は、せっかくかさぶたになりかけていた傷口を、容赦なく乱暴に剥がしていく。
ギュッと制服のスカートを強く握りしめ、必死に平静を装った。
心臓がうるさく鳴るのを必死に抑え込み、感情を顔に出さないようにする。
けれど同時に、ひどく冷めた感情も、私の奥底から静かに湧き上がってきた。
(……きっとあれは、私に見せつけるためにわざとやってるんだ)
彼女の行動は、あまりにも不自然で、あからさますぎた。
新太の気持ちや周囲の目なんてそっちのけで、わざわざ私の目の前で、見せつけるようにキスをするなんて。どれだけ性格が歪んでいるのだろう。
私は見なかったふりをして、無表情のまま二人の横を通り抜けた。
けれど、そう確信するような嫌な出来事が、この日を境に、日を追うごとに何度も何度も繰り返されるようになっていった。
